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画家・榎並和春  2011/3からHPアドレスが変ります。 → http://enami.sakura.ne.jp
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「老いる」
F3
はる 3289
 正直なことを言えば、表現者という立場で考えると、今までは助走、仮の姿でしかない。いよいよ、これからが本番だ。何をほざいているのかと言われるかもしれないが、考えてみれば分かると思うのだが、技術とか感覚とかいうものは確かに若いうちの方が優れている部分も多い。特に体力勝負のような細密描写みたいなものは、多分若いうちにしか出来ないし、どうやってもピークは30前後できてしまうだろう。年取ってしまうと、根性にしろモチベーションにしろ長くは続かない。

 とんだ負け惜しみに聞こえるかもしれないが、(実際負け惜しみですが)早くして世の中に出なくて正解だったような気がしている。いや考えてみて、あまりにもピークを早いうちに作ってしまうと、息切れしてしまうだろうな。死ぬしか選択肢はなくなってしまう。

 才能がないものは長生きこそ才能だという風なことを聞いたことがあるけれど、確かに長く生きないと分からない事も多い。特に私のように生き様を晒してゆく芸人タイプの表現者は長く生きなければ芸が完成しない。

 多くの人がリタイヤして、ある人は悠々自適で孫の世話を楽しんでいる次期に、またある人はもう人生の表舞台から降りてしまっている時に、これからの20年ぐらいが、私の表現者としてのスタートである気がする。やっと何か入り口に立った気がするからね。 

 これは負け惜しみではなく、年を取るのがとても楽しみだ。どんな風に体の自由が利かなくなってゆくのだろう、どんなふうにぼけてわけが分からなくなってゆくのだろう?これを老人力というらしい。どんな風に自分の結末を付けてゆくのだろう?それを、その時々に考えたり感じたことを私は表現してゆく、これが私の生き様だから芸だから。 
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