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画家・榎並和春  2011/3からHPアドレスが変ります。 → http://enami.sakura.ne.jp
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はる 3287
 昔、有元利夫がセンセーショナルにデビューしてきた頃、彼の評価を支えていたのは、ごく普通の本当に絵が好きなコレクターだった。彼自身も書いていたけれど、安井賞を取ったあたりから、何だか現代美術作家として注目されて、「がんばって、がんばって」といわれているようで、何だか場違いなところに入り込んでしまったようだ、と吐露している。

 ご存知のように安井賞は具象絵画の登竜門といわれて、そこに登場するには各美術団体から推薦をもらわなくてはならない。他に個人の実力者の推薦という枠もあるのだけれど、ほとんどの場合、前者の方法で登場してくる。

 当時安井賞の推薦枠が各団体に何名あったのか詳しいことはしらないのだけれど、抜群に知名度があるこの賞の推薦をもらうためにわざわざ小さな団体に入った作家もいるようにも聞いている。

 そうやって苦労して推薦されても審査で落とされる方が入選の何倍もあるわけだから、喜んでばかりもいられない。まぁそんなことで、絵を描く人には憧れの賞だったのだが、有元はどんな団体にも所属せず、団体作家のような大作でもない小さな作品で、さっそうと登場してきて、いとも簡単に賞をかっさらっていった。

 多くの作家たちにとっては面白くないわけで、やれピカソに似すぎているとか、あれは日本画じゃないのかとか、今だけのブームに終わるとか、作家としてどうのこうのとうるさかった。たぶんわずらわしかったと思う。

 有元自身は自分の好きな絵を、好きなように描いて、それが現代美術であろうが、イラストの範疇であろうが、どうでもよかった。作ることが楽しかったし、いいと思ったものを真似しただけだ。それがたまたま時代の要求に合っただけなんだな。

 一生懸命、現代美術作家になるつもりはなかったのだと思う。彼の自負は「それでも私の作品をいい」とい言ってくれる人がいるということだった。

  有元利夫と比べるのはおこがましいけれど、私の作品は現代の最先端の作品ではないし、これが時代を表現した問題作だとも思っていない。現代美術だとか言ってへんてこりんな訳の分からん造形物を展示するものでもない。観た人に何かを感じさせる、問題を提示するものでもない。誰かと競争するために描いているものでもなければ、それによって社会的な地位や名誉を得ようとも思っていない。

 それでも、私の作品をいいといってくれるコレクターがいる。それだけで充分だ。他に何がいるのだろう。
 
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