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画家・榎並和春  2011/3からHPアドレスが変ります。 → http://enami.sakura.ne.jp
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はる 2830
 90年ごろまだ油絵を描いていた。その頃の絵はかなりはっきりとした具象絵画で、私の中では今までで一番世間的な評価が高かった頃だ。その後イタリアに行ったことをきっかけに油彩がをやめてしまった。また発表が個展を中心になって体外的なコンクールに出品することを止めてしまったので受賞することもなくなった。

 その頃の画風は絵巻物風な空間に日本画のような定型の女性像とを組み合わせたもので、まぁ当時流行りのフレスコ画風な味付けを意識したものだ。誰の影響かと言われればはっきり特定の人物が何人か浮かんでくる。

 人は時代の中で生きていて、誰もがその気分から逃れることはできない。自分の個性だと思っていたものも、時が経てば明らかに誰かの影響を受けていると分かる、時代の雰囲気というのは怖いものだ。

 当時考えていたことはまだまだ本物じゃない。今世の中に出ても偽者、亜流でしかない。もう少し自分のものが見つかってからにしてもらいたいと考えていた。やりつづけてゆけばやがては自分だけの物に近づけると単純に考えていたようだ。

 しかし、今になって思う。それが私だったんだとね。そこまでの私だったんだとね。本当の自分などというのはたまねぎの皮をむくように、最後には何も残らない。人は今の自分のレベルでしか判断できない。どんなにいい言葉でも素晴らしい絵画でも、その人にその受け皿がなければ感受することは出来ない。
 
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